サステイナブルビジョン策定支援導入事例:SDGsと未来志向
JAみっかびでは「三ヶ日みかん」をはじめとする商品のブランド価値をさらに高めるとともに、組織の強みを伸ばす取り組みを続けています。ここでは、SDGsを基点にしたサステイナブルビジョンの策定と実現に向けた取り組みをお手伝いした事例をご紹介します。
※本事例は2019年4月の取材に基づき作成しています。事例内容および部門・役職等は取材当時のものを掲載しています。
京都生活協同組合(以下、京都生協)は、京都府内で宅配、店舗、共済、福祉、葬祭事業を展開する協同組合です。1964年、「頼もしき隣人たらん」という呼びかけのもと、組合員のくらしをより良くすることを目的に設立されました。以来、安全・安心に加えて、環境への配慮やメーカー・生産者と組合員との信頼を大切にしたコープ商品の供給など、さまざまな活動を行っています。
設立時から、今話題のSDGs(持続可能な開発目標)※にも通じる考え方を事業の基本に据えてきた京都生協ですが、持続可能性(サステイナビリティ)を取り込んだ事業戦略の策定については、十分できていないという認識をお持ちでした。そこで2018年、それまで人事制度・教育制度の改定と定着でご縁のあったBCon®とともに、サステイナブル戦略の策定に取り組むこととなりました。
今回は、理事長の畑様に、サステイナブル戦略を検討するサポーターにBCon®をお選びいただいた理由、組織として取り組む意義を、お伺いしました。
2015年に国連で採択された、世界を変えるための目標。17個の目標で構成されている。取り組みが期待されているのはあらゆる国・地域、企業を含む組織、個人です。採択当初、日本での認知度はとても低かったのですが、今ではすっかり風向きが変わり、「SDGsは“知る”から“行動する”フェーズに変わってきた」と言われています。BCon®では、サステイナビリティがこれからの企業成長に大きな影響を与える要素になると考え、2014年頃からこの領域に関するソリューションを提供しています。
京都生協では、将来目指す姿を、新21世紀ビジョン「わたしのくらし わたしたちの地域に 協同がはぐくむ 安心と笑顔を」と表しています。
「これは、私のくらしを豊かにするための活動は当然ながら、そのためにはやはり地域に協同や笑顔が溢れるようなことにも京都生協として貢献したいという思いを持って、2001年に新21世紀ビジョンを掲げました。」
「豊かなくらしと言っていますが、地球が無くなればそんなくらしはそもそもありえません。くらしの持続可能性を考えた時に、環境問題も積極的に取り組まないといけないと考えています。」(京都生活協同組合 理事長 畑様)
京都生協の事業活動には、このような前提があります。ですから、「SDGsがあるから何か新たな取り組みを」「SDGsに取り組めば、事業にもメリットがある」という考え方では全くなく、「SDGsによって、今まで自分たちが事業活動で大切にしてきたことに、より確信が持てるようになった」という捉え方をされているそうです。
このように設立以来、持続可能性を大事にしてきた京都生協が、なぜ外部のサポートを得て長期計画を補強する取り組みをしようと、お考えになったのでしょうか。
「もともと2015年に作成した長期経営計画「2030年構想」があったものの、それを実現するための、具体的な道筋を考える必要性を感じていました。それには、広い視野と経験を持っている外部のサポートを得た方が、よりよい道筋が描けると考えていました。」(畑様)
その頃、BCon®のセミナーで紹介された「バックキャスティング経営」や「持続可能性4原則8項目※」といった考え方に、畑様は「ピンときた」と言います。
※「持続可能性4原則8項目」とは、国際NGOナチュラルステップが提唱する地球の自然環境と社会のサステイナビリティを損なわないための条件です。
原則1 自然のなかで、地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
原則2 自然のなかで、人間社会が作り出した物質の濃度が増え続けることに加担しない
原則3 自然が物理的な方法で劣化することに加担しない
原則4 人びとが自らの基本的ニーズ(健康・影響力・能力・公平性・意味や意義を作ること)を満たそうとする行動が、構造的に害されない
最初は科学的で少し難しい話のように感じられたそうですが、原則4が生協の理念と共通しているメッセージだという点に注目されたそうです。
「原則4の人々の基本的ニーズを満たす、健康、影響力、能力、公平、意味意義というのは、人を大事にする、組合員による活動を大事にする、学習を大事にする、民主的に意思を決定していく、といったような生協の原理原則にマッチします。」「SDGsの17ゴールは、一つ一つが具体的な課題です。もう少し深堀して、なぜSDGsなのか、なぜ持続可能な社会をつくらないといけないのか、自分たちの組織では何をすべきなのか、と突き詰めて考えるときには、持続可能性4原則8項目で考えると分かりやすいと思います。」(畑様)
今回、「2030年構想」を補う目的で発足したプロジェクトでは、この持続可能性4原則8項目を含む、「持続可能で戦略的な発展のためのフレームワーク」を軸に、サステイナブル戦略を検討しました。プロジェクトのメンバーは選抜された中堅クラスで、経営幹部に対する提言という位置づけでした。
検討は、最初からスムーズに進んだわけではありません。サステイナビリティに対する捉え方、事業に対する課題意識の持ち方はメンバーそれぞれに異なります。サステイナビリティに欠かせない「バックキャスティング」の発想も、現場経験が中心のメンバーにとっては、身近な発想ではありません。京都生協が育んできた豊かなくらしのために環境や人、信頼を大事にする価値観を再確認し、コンサルタントが提示するフレームワークを少しずつ消化することで新たな視点・課題意識をはぐくみながら、プロジェクトの議論が充実するよう、チームが変化していきました。
約5カ月間会議を重ね、幹部へ提言を実施。この時には、「2030構想」をサステイナビリティの視点から補うアイディアとして、4原則8項目を満たすビジョンや、5つの挑戦すべき領域(戦略課題)、とその実現のためのアイディア&ロードマップが提言されました。
その内容は、
など、京都生協らしい、京都生協だからこそ挑戦すべきテーマが整理されました。
提言をもってプロジェクトは完了となりましたが、畑様はその後もプロジェクトメンバーらとの意見交換を続けており、メンバーがより高い経営視点で京都生協がすべきことを考えるようになっていると、成長を実感されているそうです。
構想が決まったら、次は実現に向けた具体的な取り組みを開始しなくてはなりません。畑様は、「2030年構想」の具現化のためには、現場への浸透がカギになってくるとお考えです。
「マネージャーが『このことをやりたい』と、本気で部下に伝えていくことが大切だと思います。たとえば、今月の供給(売上)、利益、新加入の組合員を何人増やすか、ということの目的、なぜその目標を達成しなければならないのか、達成すると組織や本人、組合員のくらしにどんなプラスがもたらされるのかなどです。日々の業務が組織目標の達成につながっていることがしっかり説明されていないと、職員は『やらされ感』を感じてしまいます。」
「日々の課題達成と、SDGs や組織理念が、もっと繋がらないといけないと考えています。これらがかけ離れていると『どうせ建前で言っているんだ』と感じられてしまうのではないかと思っています。現場の職員が、SDGsや組織理念をもう少し自分に近い言葉として受け取れるようになったら、さらに行動が変わってくるものと期待しています。」(畑様)
そのためにも、BCon®が以前からご一緒している、職員の育成制度の充実、マネジメント力向上の取り組みなどを継続し、さらにさまざまな施策を有機的につなげていきたいとのことです。
「組合員の今のくらしを良くしていくだけではなくて、子、孫、その先の未来の自分の子孫も、より良いくらしができる社会や環境を作っておくということが、今我々の世代に課せられた課題だという風に思えば、将来も組合員のくらしに役立つような事業を作っていくことが必要だと、そんな思いでやっています。経営的にも、将来にしっかり資産を残し財務基盤、経営基盤がしっかりしている状態を作っていくことも大事です。今まで以上に利益を上げるという意味ではなく、日々の事業活動の先にある組織目標をしっかり踏まえる、ということを大事にしながらやっていきたいと考えています。」(畑様)
理事長の畑様は、インタビュー中も、何度もノートを見開きながら丁寧にお話してくださる方です。さまざまな場でお聞きになったことを丁寧にメモに残され、職員や幹部の方々とのお話の中で題材に使われるそうです。その中には、BCon®のセミナーで仕入れた情報も多数あることに、嬉しく思いました。お話を通して、ブランド、人材、信頼関係といった見えざる資産を大事にすると同時に、経営者として取り組んだことの成果を数値化し、改善することにもこだわる姿勢の両方を大事にされていらっしゃることが伝わってきました。
BCon®では、サステイナビリティという、一般的にはなじみの薄い概念を共通言語化し、自組織なりの意味付けをし、戦略課題を明らかにできるようなサポートをご提供しています。これを可能にするのが、国際NGOナチュラルステップが実用化した「戦略的で持続可能な発展のためのフレームワーク」です。従来より培ってまいりました組織開発の手法により、効果的な組織浸透までお手伝いいたします。ぜひお問い合わせください。
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