エンゲージメント向上支援事例:製造現場を成長させる複合的な取り組み
カイ インダストリーズ株式会社は、総合刃物メーカーKAIグループが展開する幅広い製品の製造を担ってきました。その生産工場では、モノづくりに携わる一人ひとりにアプローチし、自律自走する職場を築くためのさまざまな施策が展開されています。
製造現場におけるエンゲージメントを高め、生産性と企業価値の向上を図る取り組みについて、ビジネスコンサルタント(BCon®)が支援した事例をご紹介します。
課題とソリューション
Before
- 製造現場の生産性を高めるためにはオペレーションマネジメントよりも、社員のエンゲージメントを高めることが重要であることは認識されていたが、具体的な施策につなげられていなかった
- 社員アンケートの結果から、業務に対する使命感や積極性についての世代間ギャップの解消や、職場における関係性の改善が期待されていた
- 製造現場のエンゲージメントを向上し職場全体のモチベーションを高める環境づくりのため、製造に携わるメンバー(社員)とともに、管理職層や現場のリーダーにも変化が求められた
After
- 現場のリーダーとメンバー(社員)双方を対象とした研修(エンゲージメント向上プログラム)が実施され、職場の心理的安全性やエンゲージメントの向上がみられた
- 「エンゲージメントが高く、自律自走する人材・職場の育成が、顧客満足・企業価値向上の基盤になる」という価値観が共有された
- 部署や階層(職種)ごとの課題に応じた多角的なテーマでエンゲージメント向上施策が継続された。次世代リーダーの育成、ウェルビーイング、管理職層のマネジメント力向上といったテーマでの改善施策に発展し、複合的な取り組みとなっている
背景:社内アンケートから浮かび上がる課題
KAIグループはカミソリや包丁、爪切りなど生活に身近なものから理容や医療などの専門分野で使われる刃物まで、幅広い製品を手掛ける総合刃物メーカーとして、国内外で事業を展開しています。
同グループにおいて製品の生産を担うのが、カイ インダストリーズ株式会社です。刃物のまちとして知られる関市をはじめ岐阜県内4カ所の工場では、幅広い年代の社員・スタッフが製造業務にあたっています。
大量に生産される刃物の高い品質を保つため、カイ インダストリーズでは「人の目と手」による細やかな管理を重視しています。製造現場の安全性向上と作業の効率化への取り組みにおいては、製造に携わる社員を対象とした社内アンケートも活用し、現場視点からの提言を取り入れながら改善を進めてきました。
仕事との向き合い方や、職場での関係性を改善する具体的施策が求められていた
工場における作業環境の改善が進められる一方で、社内アンケートの結果からは「業務に対する姿勢」や「人間関係のあり方」など、多様な人材がともに働く「職場のあり方に関する課題」も見えてきました。
社内アンケートで認識された「職場の課題」
- 業務に対する使命感や誇り、職場の人間関係に対する意識・価値観について、職場内でのギャップが大きい
- 職場における管理・リーダー層とメンバー間の関係性から、チーム内での意見交換が十分に行われていない状況が懸念される
- 業務に対する認識。自らが携わっている製造業務が国内外の顧客に愛用されるモノづくりであり、企業価値の基盤となっていることへの認識を浸透させたい
納期や生産計画を満たすことが重視される製造業の現場では、管理の主眼がオペレーションマネジメントにとどまってしまうことも少なくありません。その結果、製造に携わる社員にとって日々の業務が主体的な「仕事」ではなく「こなしていく作業」となってしまいがちです。
しかし、製造現場に「ヒューマンマネジメント」の視点を取り入れることにより、一人ひとりが自律的・自発的に業務に取り組む職場環境をつくり、継続的に生産性を高めることができます。
カイ インダストリーズにおいても、一人ひとりのモラールが高く、強い信頼関係を築くことができる職場づくりの必要性がすでに認識されていました。そのうえで求められていたのが、「職場の課題」を解決し、生産性を向上するための具体的な改善施策でした。
ソリューション:エンゲージメント向上を軸とした施策
製造現場が抱える課題が整理され、その解決に向けた取り組みの基盤となる考え方やヒューマンマネジメントの重要性に対する意識がすでに共有されていたことから、BCon®では具体的な施策の第一歩として「エンゲージメント向上プログラム」をご提案しました。
エンゲージメント向上プログラムの主なねらい
- コミットメントの強化……業務をこなすだけではなく、自らの技術をさらに向上させたり、周囲の状況に応じてサポートしたりなど、仕事に対して主体的・積極的に取り組む人材、いわば「自律自走」する人材を育てる。
- 職場の心理的安全性向上……社内アンケートの結果から、現場メンバーと上司との関係性に課題があると考えられたことから、少人数グループ(チーム)内で十分に意見交換が行われる職場とするため、リーダー層とメンバーの関係強化を図る。
- 製造業務に対する認識の向上……自らが携わる製品が広く社会に浸透していること、海外を含め多くの人々に愛用され、衛生環境の向上に役立っていることを理解し、製造業務(モノづくり)が企業価値を支えていることを理解する。
製造に携わる一人ひとりのエンゲージメント向上は、社内アンケートから浮かび上がった課題を根本的に解決しようとするアプローチであり、製造現場全体の生産性向上を図るものです。
エンゲージメントとは?
エンゲージメントとは「組織(企業)が目指しているもの」と「個人(社員)が目指しているもの」が一致している状態のことを指します。各個人が、所属する組織・企業、あるいは一緒に働く人々に対して愛着心を感じ、貢献意欲を持って仕事・業務に熱中・集中して取り組んでいる状態ともいえます。
エンゲージメントが高い状態では、社員が「この組織にいれば自分の目指している姿に向かって成長できる」と実感することができ、また「自己実現に向けた行動によって、組織の目指しているビジョン、ミッションの実現に貢献できる」と感じることができます。エンゲージメントの向上は、業務に携わる一人ひとりの働きがいや生きがいを高めることにもつながります。
エンゲージメントを高める7つの要素
エンゲージメントを向上し持続的に高い状態を保つためには、次に示す「7つの要素」の実現が重要です。
- 上司の支援……上司からの期待を感じている。自分の努力や貢献を認めてくれている。自身の成長のために指摘や支援も積極的に行ってくれる。
- 人間関係づくり……職場の人々はお互いを気にかけており、組織の中には心から信頼できる人が何人かはいる。職場をこえていろいろな人と関係を築けている。
- 事業の将来性イメージ……事業の将来性に対するポジティブなイメージを社員が持てている。組織の理念に共感し、貢献し続けたいと強く思う。
- 自己成長実感……現在の仕事を通じて成長を実感できている。成長のための機会が組織内に豊富にあり、活用できると感じている。
- 仕事の意義・貢献……仕事、家庭などに対して、現在または将来への貢献を実感・確信できている。結果、仕事自体に意義を感じることができている。
- 多様な働き方の選択……国籍、性別、年齢、健康状況、家庭状況(介護や育児)などに対しても不安にならず、多様な働き方の選択肢を選ぶことができている。
- 処遇の公平感……努力や成果に見合った処遇がなされている。また、一時的な不公平があったとしてもそれを是正できる可能性を感じている。
このうち「6.多様な働き方の選択」と「7.処遇の公平感」については組織の制度による部分が大きいことから、本事例ではほかの5つの要素(要素1~5)に着目した取り組みを行いました。
「7つの観点」について、詳しくはこちらのコラムでご紹介しています。
組織のエンゲージメント向上につながる7つの観点
エンゲージメント向上プログラムのプロセス
本事例では、研修を通じて製造現場のリーダーとメンバーそれぞれに働きかけることで、チーム制をより効果的なものとし、エンゲージメントの向上を目指しました。プログラムは大きく3つのフェーズ(期間)に分かれます。
複合的な取り組みとなるエンゲージメント向上施策の実施にあたっては、課題を整理し、施策のねらいを明確にしたうえで、プロセスを整理することが重要です。本事例では、各フェーズにおいて以下のような取り組みが行われました。
フェーズ1
●現場リーダー向け研修:
「エンゲージメント」への理解を深め、メンバーとの関わりを効果的なものにするための知識とスキルの獲得を図る。メンバーの強みを理解しチームのモチベーションを上げること、あるいはメンバーの成長とキャリアにも寄り添うことができるリーダーを目指す。
主なテーマ
- 成功の循環モデル*1(職場活性化のポイント)
- キャリア経験
- お互いの強みを知る、強みを活かす
- 貢献したいこと、フォロワーシップ
フェーズ2
●現場リーダー向けフォロー研修:
メンバーのモチベーションを高め、それぞれの強みが発揮しやすい職場をつくるための知識とスキルの獲得を図る。各テーマについて、メンバーに働きかけるためのガイドラインを作成する。
主なテーマ
- メンバーの強みを見出し、強みを活かす仕事や役割とは
- メンバーの、組織内外の関係者とのつながり
- メンバーへの仕事の提示・コントロールと自由裁量の関係
- メンバーが仕事の貢献・価値を感じられるようにする方法
●メンバー向け研修:
「ジョブエンゲージメント向上プログラム」として、仕事観や人間関係に向き合う姿勢・考え方の転換を図る。仕事への向き合い方や、上司との関わり方についての理解を深める。
主なテーマ
- キャリア・経験の活用のデザイン
- 関係性エネルギーの可視化(職場における上司と部下、同僚の関係性を強化)
- 仕事の貢献と価値
●現場リーダーとメンバーの対話:
研修終了後、リーダーとメンバーの対話機会を設け、双方の視点を活かしたディスカッションを行う。研修内容(各回のテーマ)を踏まえて、気付きや学びを共有。コンサルタントは同席せず社内での取り組みとして実施。
主なテーマ
- 強みを活かした仕事内容
- 任せること、指導すること
- 部署を越えた人とのつながり
- 仕事の貢献・価値を高める
フェーズ3
●各工場でレジリエンスプログラムを実施(社内研修):
BCon®の公開講座を活用し、各工場の管理職やリーダーが「SBRPライセンス」*2を取得。レジリエンス向上プログラム(研修)を実施可能な社内インストラクターを育成することで、自社内のみでも取り組みを持続し、より効率的・効果的に「自律自走する人材」を育てられる組織づくりを進める。
●ATC、VIAの職場活用:
レジリエンス向上プログラムで学んだ「ATC」*3や、「VIA診断」*4で把握した自分の強みを日常の業務に生かす取り組みを進める。
プログラムの実施においては、BCon®のコンサルタントが直接関わる取り組みに加え、SBRPライセンスを取得した社員による社内研修が行われ、職場における関係性の改善(心理的安全の向上)を社内の人材のみで進められる体制づくりも進められました。
*1 成功の循環モデル……MIT組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏によって提唱されたモデル。組織が成果を上げ続けるための要素とプロセスを明らかにしたもので、特に「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」の4つの要素が相互に関連し、循環することで組織の成功を促進するとされている。
*2 SBRPライセンス……社内でレジリエンスプログラムを展開するためのトレーナー向け講座。レジリエンスプログラムは、一人ひとりが持つ強みに焦点を当て、困難を乗り越える力を高めることを目的とする。プログラムのなかで活用する、ATCやVIAの理論も学習し、社内での活用を可能にする。
*3 ATC……心理学や認知療法で用いられるABC理論をもとにBConが開発したフレームワーク。ある出来事(Activating event)と、その出来事に対して自分が持った考え(Thoughts)、そしてその考えによってもたらされる感情や行動(Consequences)の関連性を整理する。自分の思考が行動や結果にどの影響を与えているかを理解し、改善するのに役立つ。
*4 VIA診断……Values in Actionの略。ポジティブ心理学で提唱されている人間の24の徳性の強みについて、自身の傾向を知るための診断。VIAを活用することで、幸福感や充実感を高めることができるとされている。
インタビュー:職場の変化に、取り組みの成果を実感
BCon®との取り組みとプログラムへのご評価を、導入ご担当者の藤村様に伺いました。
価値観の共有・共感が、BCon®との取り組みの起点に
藤村:製造業務に携わる社員を対象としたアンケートから見えてきたのは、職場の環境(人間関係)についての悩みや、仕事に対する意識や価値観のギャップの存在でした。自分が担当する業務に対して、受動的な姿勢で取り組んでいるメンバーが少なくないという状況も、改善する必要があると考えていました。
私が製造本部長となった際に作成した「製造本部の価値観」という図は、製造業務に携わるメンバーあるいはその現場のあり方が、顧客へのサービスや、組織(KAIグループ)の売上・利益を支える基盤になっているという考え方を示した、一種のバリューピラミッドです。
この「ピラミッド」の土台をしっかりと築くこと、つまり製造現場に携わるメンバーのモラール(エンゲージメント、セルフエスティーム)を向上し、自律自走する職場・人材を育てることが課題であり、BCon®との「エンゲージメント向上プログラム」の主なねらいとなりました。
組織の生産性向上や製造現場の改善という課題に対して、人に働きかけ、人を育てていくことで根本的な解決を目指す。こうした考え方を共有・共感できていることが、さまざまな取り組みをBCon®とともに進めている理由のひとつです。ポジティブ心理学をベースにしたBCon®のアプローチに魅力を感じていますし、研修を担当されるコンサルタントをはじめ、よい方ばかりなので、一緒に取り組んでいて楽しいんですよね。
取り組みはまだ道半ばだが、確実に成果が現れている
エンゲージメント向上という視点での研修を、製造現場に携わる社員向けに行うのは初めての取り組みでした。当初は若干の心配もありましたが、実際に始まってみると活発な議論も見られるなど、積極的に関わる姿がありました。社員同士がお互いの関わりを深めながら、職場の改善に主体的に取り組む“場”をつくることができたというところも、BCon®との取り組みの成果だったのかなと思います。
社内アンケートを通して設定された課題の解決、目標の達成までは、まだ道半ばです。それでもプログラムが進むにつれ、改善が進んでいると感じています。参加した社員からは「エンゲージメント」や「レジリエンス」「自律自走」といった言葉が聞かれるようになり、そうした考え方が自分たちのものになり始めていることが分かります。研修を通して、職場や、そのリーダーあるいはメンバーとして望まれていることを個々人に認識してもらうことができました。
勤務中の様子を見ていても、自発的に業務に取り組むようになってきたことが分かります。製造業務自体ももちろんですが、たとえば生産の効率化を妨げる「16大ロス」の低減だとか、労働生産性向上のための変動費低減というような課題に対して、その解決につながるようなことを自ら考えて、動き出してくれるようになった。冒頭の「バリューピラミッド」に照らしていえば、(下から2段目にあたる)製造の現場という自分たちの職場の安全性を確保するという目的に対して、具体的に何をするべきなのかを、一人ひとりが考えて行動する職場になってきました。これは一番大きな、重要な変化でした。
もうひとつの変化は「外向きの価値観」が育ってきたということですね。これまではいわゆる「内向きの価値観」が強い傾向がありましたが、BCon®との取り組みを通して、顧客の方に目を向け、自分たちの仕事の価値を再定義していこうと発信を続け、その成果が出始めたかなという感触があります。
継続的な取り組みで、成長する組織の「土壌」をつくる
こうした変化は、いくつかのテーマで継続的に取り組みを進めてきた成果が積み重なって出てきたものだと思っています。「エンゲージメント向上プログラム」はそのきっかけで、自律自走する組織の「土壌づくり」のはじまりだったんですね。
現在も「次世代リーダー育成プログラム」や「管理者育成研修」など、研修対象者やテーマ、切り口を変えながら取り組みを続けています。これは現場をまとめるリーダー層を育てることで、職場の変化や社員(メンバー)一人ひとりへの働きかけにつなげていくというアプローチです。
また「次世代リーダー育成」は、サクセッションプランの実現に向けたステップでもあります。将来的にリーダーとして現場をまとめていく人材を、長い目で育成していきたい。従来はいわゆる現場叩き上げでリーダーになっていくことが多かったのですが、育成の仕方や学び方も変化していますから、リーダーとして何が求められるのか、どう役割を果たすのかということについて、学ぶ機会をつくりたいと考えています。
継続的な取り組みによって製造現場のエンゲージメントを高め、人が成長する土壌をつくることで、組織をよくしていく。こうした考え方は、BCon®のコンサルタントとお話ししたり、公開講座「LEMS」*5に参加したりするなかで学んだことでもあります。
目標とする組織の姿まではまだ届いていませんが、さまざまな施策を通じて改善が進んでいます。今後は現場のリーダーに加えてサブリーダーを対象にした研修の実施だとか、「エンゲージメント向上プログラム」にも組み込まれていたSBRPライセンスの取得・活用をさらに進めるといったことも、BCon®と一緒に取り組んでいきたいですね。そうしたプロセスを通じて、顧客にとってのメリットや企業価値を支える製造現場の「価値観」を確固たるものとして共有し、組織の土壌、風土にしていくところにまでつなげていきたいと考えています。
*5 LEMS®……時代の変化に合わせたマネジメントの在り方やリーダーシップについて学習する公開講座。自己革新型組織を創るために、組織開発・人材開発の最新の考え方と豊富な事例が提供される。
さらなる展開:組織を育てる、継続的・多角的アプローチ
本記事でご紹介したカイ インダストリーズでの約1年間の取り組みは、翌年以降「次世代リーダーの育成」や「ウェルビーイング向上」「管理者の育成」といったテーマでの研修プログラムへと展開し、継続されました。
次世代リーダー育成プログラム
管理職になっていない中堅層を対象としたプログラム。工場現場の将来を担う次世代リーダーの育成を通じ、自律自走できる人づくりのきっかけに繋げて工場現場をより良くしていく。
ウェルビーイングプログラム
技術部門を対象に実施。会社としての生産性向上や精度の高いモノづくりを実現する上で、技術部門が果たす役割は大きい。技術部門のより良い状態を実現するため、ウェルビーイングに対する理解向上を通じて、バージョンアップを目指す。
管理者育成研修
組織の持続的成長に必要なマネジメントを学習し、実践する。管理者として視点視野視座の拡大を図り、経営幹部としてのリーダーシップを強化する。
これらは自律自走する人材・職場づくり、あるいはメンバーのモチベーションを高める管理者の育成といった多角的なアプローチを継続的に行うことで、製造現場におけるエンゲージメント向上をさらに推し進めようとするものです。同時に、人材育成や職場の活性化などを通して組織の持続可能性を高めるための施策ともなっています。
インタビュー:「メンバーのエンゲージメントを高めるリーダー」として
「管理者育成研修」に参加された、清水様、近松様のお二人に、研修での成果やご感想を伺いました。
研修での取り組みを通じて、課題や目標が明確に
清水:私も近松も、以前は海外の事業所を管理する立場にあって、研修で扱われた内容と共通するようなことを意識してはいたと思うんです。ただ、これまでは曖昧なイメージで認識していた部分もあって、それらを研修では体系立てて整理することができたという実感があります。
もう一つ印象深いのは、研修中に行った「キャリア・ポテンシャル®診断」*6ですね。診断結果を基に、管理者としての私自身の課題を改めて捉えることができました。
また職場のエンゲージメントを高めるという課題に関していえば、自分だけではなく、社員みんなで取り組んでいくためのポイントが明確化されたのも大きいですね。社員のやる気を引き出す・やる気を削がないために、私たちがどうするべきなのかということはよく考えなければいけないですし、今回の研修はそれを整理・再認識する機会になりました。
近松:研修で得られた成果としてはじめに挙げられるのは、上司(注:藤村氏)が課題や目標としているものへの理解が深まったということです。「自律自走」「エンゲージメント」といった重要な概念についてもそうですし、今後はさらに組織全体が目指すところや、藤村の考えや思いを理解していくことができるだろうと思います。また研修の一環として公開講座「LEMS®」にも参加したことで、管理者・リーダーとして求められることの全体像を掴むことができました。
研修で扱われたキーワードのなかには「心理的安全性」に関わるものもあって、個人的には特に興味を持ちました。私自身が管理者として業務を行うなかで感じていたものが言語化されて、今後の課題として明確に認識する機会にもなりました。
多層的な研修が生み出した変化
近松:研修で学んだことを私たちが実践するなかで、実際の職場に現れた変化もあります。たとえば、工程ごとに構成されている、あるチームでの朝礼でのことです。以前はリーダー(研修参加者)との「おはようございます」という挨拶でさえ声が小さく、コミュニケーションに課題があるチームでした。ところが、研修での取り組みを参考に「はじめの挨拶を、メンバーが順番に担当する」という工夫をしたところ、メンバーの振る舞いががらっと変わったというんです。
これは小さな変化ですが「職場での取り組みを“自分ごと”として捉える」ということにつながる、最初のステップになったのではないかと思います。そして、そうした「変化を引き出すことができた」ということが、研修での成果のひとつだといえるのではないでしょうか。
清水:私が担当する部署でも、各チームのリーダーの変化を感じるところがあります。特に大きいのは、自分のチームの変化・成長に対して、すごく敏感になったということですね。研修での課題もありますけれど、自分たちで課題を設定して、1カ月間取り組んでみる。その結果として、どういう変化が現れたかということを確認していくんです。研修を受けたことでリーダーがエンゲージメントの大切さを理解し、チームメンバーと意識的に関わるようになった。これは非常に大きな成長だったと思っています。
近松:研修の進め方についてお話しすると、「Blendedx」*7の活用には大きなメリットを感じています。研修日の講義やワークショップでの学びがその場で終わりになるのではなくて、参加者が振り返りをしたり、各自の実践の状況などを共有したりといった取り組みを続けることで、さらに理解が深まることを実感しました。
清水:管理者育成研修などと合わせて、自社の組織風土を把握する「品質意識調査」も実施されました。その内容や診断結果のレポートも、非常に意義のあるものだったと思います。弊社の状況を客観的・俯瞰的に捉えるもので、自社だけではなかなか得られない視点でした。こうした研修や診断が複合的に行われることで、それぞれの学びを結びつけながら、改善への取り組みを進めることができました。
*6 キャリア・ポテンシャル®診断……仕事で高い成果を出すためのコンピテンシーの現状の発揮度合を理解する診断。ハイパフォーマーの調査データから抽出した6つの人材像モデルとの比較や、33のコンピテンシーの診断からなり、自身の強みや啓発点の把握に役立てられる。
*7 Blendedx(ブレンディクス)……学習コンテンツの作成から配信、研修課題の配布・提出・回収までを一元管理できるオンライン学習管理システム。受講者同士が研修後も学びや気づきを共有でき、職場実践の動機づけにつなげることができる。
「エンゲージメント向上プログラム」を起点とした一連の取り組みは、カイ インダストリーズの課題に沿って検討され、展開されています。一過性のものとせず、継続的に行われる組織開発・人材開発の取り組みは、経営活動の基盤ともいえます。
BCon®では組織開発と人材育成に関する専門的知見を基盤とした複合的支援により、今後も製造現場におけるエンゲージメントと生産性、そして企業価値の向上をサポートしてまいります。
お問い合わせ
BCon®は、複数の観点から組織の課題を捉え、その解決に向けた具体的施策を支援しています。課題に応じてカスタマイズされた研修プログラムを提供するほか、公開講座を活用した社内インストラクターの育成、自社内での研修実施を可能にする体制の構築など、施策をより効率的に進めるための支援も可能です。
製造現場のエンゲージメント向上施策についてのご相談や、コンサルティングと公開講座を組み合わせたプログラムの詳細など、導入事例についてのより詳しい説明をご希望の場合は、以下のボタンからお問い合わせください。
BCon、LEMS、キャリア・ポテンシャル診断は、株式会社ビジネスコンサルタントの登録商標です
関連サービス/公開講座
人材把握ツール:キャリア・ポテンシャル®診断
仕事で高い成果を出すためのコンピテンシーの現状の発揮度合を診断するツールです。
SBRPライセンス取得講座
「SBRP ストレングス・ベースド・レジリエンス・プログラム®」を組織全体に広く、早く、確実に教育を展開するためのライセンス取得講座です。
LEMS®(リーディング・エッジ・マネジメント・セミナー)
永続的組織をリードするためのマネジメント哲学、理論等、「知識・事案」を体系的に習得します。
ODL®(オーガニゼーション・ディベロップメント・リーダーシップ)
組織変革のマネジメント活動(組織開発)を体験し、経営視点のリーダーシップを身につけます。
HEP(ヒューマン・エレメント・プログラム)
自分の行動・感情・こだわりの特徴を理解し、より効果的な対人関係の形成を習得します。
学習設計ツール(Blendedx)
集合研修とデジタル学習を包括して、単発のイベントではない、より効果性の高い学習体験の提供と利便性の高い学習運用を可能にするツールです。
カイ インダストリーズ株式会社
- 本社
- 岐阜県関市
- 事業内容
- 家庭用・業務用刃物類の製造、業務用刃物の国内向け営業、カミソリ及び医療器の海外向け営業
- 従業員
- 776人(2024年11月現在)
- ウェブサイト
- https://www.kai-group.com/